数次相続と遺産分割
数次相続とは
被相続人が死亡し、相続手続きが完了しないうちに、相続人が死亡して、次の相続が起こってしまうことをいいます。
数次相続の例
〈一次相続〉
被相続人 甲(×1年4月15日死亡)
相続人:配偶者 乙、長男 A、長女B
〈二次相続〉
被相続人:乙(×1年6月20日死亡)
相続人:長男 A、長女B
一次相続の遺産分割前に二次相続が発生した場合には、一次相続である甲の財産に関する遺産分割は、AとBの二人で行うことになります。
遺産分割と相続税額
数次相続の場合は、遺産分割・特例適用を調整することにより、一次相続と二次相続のトータルの税額を最小限にすることができます。
遺産分割・特例適用のパターンは以下の3つです。
①乙に甲の財産を取得させない。
②乙に甲の財産を取得させ、配偶者控除を使う。
③乙に甲の財産を取得させるが、配偶者控除を使わない。
甲の固有財産が2億円、乙の固有財産が1億円と仮定した場合、数次相続が起こった際の一次相続及び二次相続の相続税額は以下のようになります。
①乙に甲の遺産を取得させないケース
〈一次相続〉
合計 | 乙 | A+B | |
遺産総額 | 2億円 | 0 | 2億円 |
基礎控除額 | △4,800万円 | ||
算出相続税額 | 2,700万円 | 0 | 2,700万円 |
配偶者控除 | 0 | 0 | - |
納付相続税額 | 2,700万円 | 0 | 2,700万円 |
〈二次相続〉
合計 | A+B | |
遺産総額 | 1億円 | 1億円 |
債務控除 | 0 | 0 |
基礎控除額 | △4,200万円 | |
算出相続税額 | 770万円 | 770万円 |
相次相続控除 | 0 | 0 |
納付相続税額 | 770万円 | 770万円 |
②乙に甲の財産を取得させ、配偶者控除を使うケース
※一次相続で甲の財産の2分の1を乙が取得したものとする
〈一次相続〉
合計 | 乙 | A+B | |
遺産総額 | 2億円 | 1億円 | 1億円 |
基礎控除額 | △4,800万円 | ||
算出相続税額 | 2,700万円 | 1,350万円 | 1,350万円 |
配偶者控除 | △1,350万円 | △1,350万円 | - |
納付相続税額 | 1,350万円 | 0 | 1,350万円 |
〈二次相続〉
合計 | A+B | |
遺産総額 | 2億円 | 2億円 |
債務控除 | 0 | 0 |
基礎控除額 | △4,200万円 | |
算出相続税額 | 3,340万円 | 3,340万円 |
相次相続控除 | 0 | 0 |
納付相続税額 | 3,340万円 | 3,340万円 |
③乙に甲の財産を取得させるが、配偶者控除を使わないケース
※一次相続で甲の財産の2分の1を乙が取得したものとする
〈一次相続〉
合計 | 乙 | A+B | |
遺産総額 | 2億円 | 1億円 | 1億円 |
基礎控除額 | △4,800万円 | ||
算出相続税額 | 2,700万円 | 1,350万円 | 1,350万円 |
配偶者控除 | 0 | 0 | - |
納付相続税額 | 2,700万円 | 1,350万円 | 1,350万円 |
〈二次相続〉
合計 | A+B | |
遺産総額 | 2億円 | 2億円 |
債務控除 | 1,350万円 | 1,350万円 |
基礎控除額 | △4,200万円 | |
算出相続税額 | 2,935万円 | 2,935万円 |
相次相続控除 | △1,350万円 | △1,350万円 |
納付相続税額 | 1,585万円 | 1,585万円 |
納税額比較
①のケース | ②のケース | ③のケース | |
一次相続納税額 | 2,700万円 | 1,350万円 | 2,700万円 |
二次相続納税額 | 770万円 | 3,340万円 | 1,585万円 |
合計 | 3,470万円 | 4,690万円 | 4,285万円 |
遺産分割の方法、配偶者控除の適用有無により、納税額に大きな差が生じます。
③のケースでは、一次相続であえて配偶者控除を使わないことで、二次相続で債務控除及び相次相続控除を使うことができます。
また、今回は②と③のケースで乙の取得する一次相続財産を2分の1としましたが、乙の取得割合を変えることで、さらに納税額を減少させることもできます。
数次相続が生じた場合、相続税の納税額の観点からは、遺産分割について、複数のシミュレーションをすることが必要です。